オトナには、正しい性知識が必要です。
健全な青年たる者、相手も自分も傷つけない、素敵な性生活を送らねばなりません。
でも、セックスの知識ってどこで身に付ければいいんでしょうか?
自分がうまくできているかわからない。誰かに正しいやり方をこっそり教えてほしいけど、玉石混合のネットの情報なんて信用できない…
というわけで、ここは思い切って原点回帰! 100年前のセックスハウツー本を読んでみましょう。
極論、セックス自体は100年前から何にも変わっていません。昭和初期の本にもきっと学ぶことがあるはず!
『性愛技巧と初夜の誘導』
昭和2年に刊行された『性愛技巧と初夜の誘導』(南海書院)。
「風俗壊乱」の疑いありとして、当時発禁処分となった曰く付きの本です。
著者の羽太鋭治は医師。性科学研究家としても活動し、多くの著作を残しています。
ぎょっとするタイトルではありますが、ちゃんとした医師が書いているのだからきっと信頼できる内容のはず。早速読んでいきましょう。
真面目にトンデモ
はい、全332頁。しっかり読んでみました。旧字体ばっかりで読みづらかった。
エロの欠片もない。
むしろ、著者の医学知識を生かし、性生活に向き合おうとするれっきとした医学書でした。つまり、別に面白くはない。下世話な気持ちで読んでしまったことを反省します。
がしかし、真剣に書いているがゆえに、当時の家父長制的社会通念および誤った医学知識にもとづく、トンデモ解説が散見されます。
ということで、ここからは現代のモラルでは到底理解できない、
でも当時の医師が大真面目に解説する、トンデモ性知識を一挙に6連発ご紹介します。
セックスですら「お国のため」
まずは序文から。ただ素敵なセックスのやり方を知りたかっただけなのに……。
いきなりのパンチライン。大正〜昭和特有のヤバさを感じます。
南京事件も勃発したばかりの1927年、性愛という極めて私的な行為であっても「お国のため」でなければいけなかったんですね。
貧乏人は子どもを作るな!
更に怖いこと言ってます。障害者と貧乏人は子どもを作るな、だって。大日本帝国には、強くて健康な日本男児しか必要なかったのでしょうか。
貞操帯は婦人の誇り!?
続いて本文から、貞操帯に関する記述。家父長制の極みで、頭がクラクラします。
「貞操帯を使用するのが婦人の誇り」になる時代、本当に来なくてよかった。
自慰をすると陰気になる!?
続いて、自慰の有害性を滔々と説いています。
やはり「産めよ殖やせよ」の時代。国家繁栄のために子どもをたくさん作らなくてはいけません。大日本帝国の皇民たる青少年には、自慰なんてしている暇は与えられなかったのでしょう。
セックスが血液にもたらす変化とは…
これが当時の医学の限界です。
セックスをすると血液の成分が変わる?
血液検査で処女かどうかチェックするの、なんだかやばい性癖のAVにありそうです。
陰毛がない女性は嫌われる!?
陰毛がないからって死んではいけない。VIO脱毛の存在をこの著者が知ったらどう思うでしょう。まあ、時代が変わるとともに、美の認識も絶えず変化していくものです。
誰も馬鹿にしてはならない
以上、100年前のイカれた性知識6選でした。
21世紀を生きる我々にとっては、あまりに信じ難い道徳、医学知識の数々です。
しかし!嘲笑ったそこのあなた!
100年前の紳士淑女が、必死に性について考え、セックスに励んだからこそ我々が生きているのです。あなたの曽祖母が陰毛の薄さに真剣に悩んだかもしれない。自慰に背徳感を抱く曽祖父がいたかもしれない。
そう思えば、なんだか愛おしい気がしてきませんか?
1996年生まれ。編集者。慶應義塾大学卒業。出版社数社を転々とし、現在は専門出版社に在籍。主に学術書の編集を担当している。横浜生まれ横浜育ちの自称シティボーイ。
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