「遊べる本屋」ヴィレッジヴァンガードが危機に瀕しているらしい。
報道によると、24年5月期決算の売上高は前期から2%減少。最盛期は400に及んだ店舗も大量閉店の兆しを見せているという。
ヴィレヴァンの敗北の原因はどこにあったのか……。
元ヴィレヴァン店員が、一度もヴィレヴァンに来店したことがない男を連れて、10年ぶりに店舗を訪れてみた。
10年ぶりの凱旋
北山:やってきました。ヴィレッジヴァンガードの某店舗です。
四ツ谷:ヴィレヴァンって、汚くてごちゃごちゃしてるイメージで敬遠してた。なんか変なサブカル受けしそうな商品がたくさん置いてあるんでしょ。
北山:そうだね。通路は狭いし、カバンで商品を倒してしまうお客さんがいっぱいいたよ。
四ツ谷:でも、この店舗は非常に通路が広い。ベビーカーがすれ違えそうなくらいだ。それに、照明も明るいし。
こんなのただの雑貨屋じゃないか!
北山:端的に言って「アングラ感」がないね。小綺麗な雑貨屋さんだ。
四ツ谷:肝心の商品だけれど、基本的にキャラクターグッズしか置いていない。サンリオ、ちいかわ、マリオ、カービィ……。大衆受けするキャラクターばっかりじゃないか!
北山:言ってしまえば、どこでも買える商品だな。昔はもっと意味の分からないものがいっぱいあった気がするんだけど。
「求めているもの」は何ひとつないけど、「予想外のもの」があるのが良いところだったのに。中学生のころ、鮭のクッションと馬のマスクを買った記憶があるよ。
四ツ谷:記事にもあったように、大型ショッピングモールに進出したのが良くなかったのかな。その場所で勝とうと思ったら、郊外の家族連れが欲しがるものを置かないといけないし。
北山:そうなると、尖ったものは置けなくなる。「秘宝館」の本とか、変にフェティッシュな書籍が揃っていて楽しかったんだけど。
四ツ谷:そうだ。本来は本屋さんだったね。書籍の品揃えはどうだろうか。
北山:意識高い系のビジネス・ライフスタイル書籍しか置いてないな。うーむ、15年前はせめて横尾忠則とか寺山修司とか都築響一くらいは並んでいた記憶があるが……。
四ツ谷:「少数の人に刺さる商品を揃える」ってコンセプトが、そもそも巨大化に向いてなかったんだろうね。巨大化した資本に応えようと思うと、利益も巨大化させないといけない。アングラ商品を売るのでは、無理があるわけだ。
ヴィレヴァン=BUMP OF CHICKEN?
北山:BUMP OF CHICKENと同じだよ。昔は「俺らあれだから、ブラウン管の前で評価されたくないから」とか言ってたけど、商品としてのバンドが巨大化してしまうと、紅白にも出演せざるを得ない。周りの意見も増えるわけだし。バンドだけの意向で決められることは減っていく。その結果、ある程度従来のファンは離れてしまう。この場合の紅白はイオンモールってこと。
四ツ谷:ワークマンとかも同じかもね。元々作業服ブランドとして地位を確立してたのに、ちょっとお洒落路線に転換して一瞬だけもてはやされた結果、本来の土木関係の職人たちから見放されてしまった。
ヴィレヴァンのセンスは「社員教育」で身につくのか
北山:もともとヴィレヴァンにあった特有の「センス」は、教育できるものじゃないから難しいよ。店のセンスが良かったから、それぞれカルチャーに精通したヤツらが自動的に入って来た。まだ辛うじて歴史ある「ヴィレヴァン」の看板があるから良いけど、そのうち「普通の雑貨屋」くらいの意味になっちゃうだろうね。現に最近の中高生とかはそう捉えているだろう。そうなれば、本当に終わりだ。
四ツ谷:ヴィレヴァンはこれから、店舗数を絞って本来のポジションを取り戻すか、開き直ってドン・キホーテ化するかの岐路に立たされているわけだ。
北山:個人的には前者であってほしい。そうなると、店舗数が減少していくのは良い傾向かもね。また店舗ごとの尖りを再生産できるかもしれない。言っても俺はヴィレヴァンに育てられた「VVチルドレン」だ。これからの持ち直しに期待しよう。
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