アラサーにぴったりの夏の旅行先とは、どこだろうか。
湘南? 沖縄? いずれもはしゃぎすぎかもしれない。
もっとも適した場所は、案外近くにあったのだーー。
集合場所は「浦安」!?
四ツ谷:いよいよ夏だね。バカンスの季節だ! お前らもしみったれた顔ばっかしてないで、さっぱり爽やかになろうや! 良い島があるらしいから、そこに行ってみようぜ。
高端:隠岐に行ったばかりなのに。四ツ谷は島が好きだね。先祖の血か。
四ツ谷:島なんて何回行ってもいいんだよ。じゃあ、土曜日に浦安駅集合で。
北山:浦安……?
高端:おい、こんなところに島があるのか?
23区内唯一の自然島
四ツ谷:いいから黙って着いてこい。後悔はさせねえよ。こっちだ。この橋を渡ったら、23区内唯一の自然島「妙見島」があるらしい。今日はこの島を遊びつくすという企画です。楽しみだな。
四ツ谷:着いたぞ。さあバカンスだ!!
高端:……。
北山:あ、ダメだ。この島にもないことが一目で分かる。視界が灰色だもん。
四ツ谷:文句ばっかり言いやがって。お前らがハワイだのグアムだの行けるわけないだろ。妙見島で充分。それに何もない場所を楽しめるかは、俺たちの腕にかかっているんだよ。
ほら見ろ、ラブホがあるじゃん! 素敵だね。愛だ。
北山:どこにでもあるだろ……。
島を楽しむコツ
四ツ谷:違う! テンションあげろ! 来ちまったもんは仕方ないんだ! この一軒のラブホに、どれだけの物語を見出すかが大事なんだよ。
高端:たしかに、こんなにアクセスが悪いところで、商売が成り立つのかな。手前の浦安側にもけっこうラブホがあったぞ。わざわざここに来る意味はあるのだろうか。
四ツ谷:その調子!
北山:おい、見ろ! 中年カップルが近づいてきたぞ。
四ツ谷:入った! ギリギリ東京であることが何か店のアドバンテージになっているのかな? まあ、人通りはないから絶対にバレないだろう。女性がちょっと時間あけて入っていったから不倫かな。男性はスーツだし、仕事ってことにしているのかも。隔絶された島での逢瀬、興奮するじゃねえか!
北山:やるな。ちゃんと一軒のラブホを楽しみやがった。なるほど、これが妙見島を楽しむ姿勢か。理解できた。
高端:了解。気持の問題ね。じゃあ次は俺が。
この空間はかなり広いぞ!
北山:本当だ! サッカーくらいできそう!
四ツ谷:サッカーコートの隣に花も咲いてるぞ!
北山:この看板には、良いことしか書いてない! クソでかQRコードもある。人通り皆無なのに、こんなの誰が読み取るんだ!?
四ツ谷:こっちはオフィス用品の墓場だ! こんな椅子の山はなかなか見れないぜ。
高端:すげえ短いガードレール! わざわざ見に来る価値がある!
必見! 島の見どころ
北山:……このノリ疲れないか……? 正直に言って、わざわざ来るほどのところではない。
四ツ谷:工業地帯だから、工場は見ごたえがあるけどね。あの食品工場とかカッコいい。
高端:クルーザーがたくさん並んでいるのも壮観。工場とヤシの木も相まって、なんだかグラセフを髣髴とさせるぜ。そんなところだ。これが妙見島の限界かな。
北山:何がバカンスだ、騙しやがって。
高端:暑いからクタクタだ。埃っぽいし、喉がイガイガする。茶くらい飲ませろ。
四ツ谷:飲食店なんてないだろ。
北山:いや、この会員制のマリンクラブにカフェラウンジがあるみたいだぞ! 会員じゃなくても入れるみたい。
高端:うわ、すんごい良いカフェじゃん。都内でクルーザー乗ってるなんて、だいぶ余裕がある人が集まるんだろう。接客もめちゃくちゃ丁寧だ。空間に「余裕」が満ちている。俺たちの人生のゴールかもしれない。
四ツ谷:都内でクルージングライフ、ちょっと良いかもな。割と余裕も出て来たし、真面目に検討してみても良いかもしれない。このクルーザーとかカッコいいじゃん! 乗りたい!
北山:そのクルーザーは600万円です。
高端:お呼びじゃなかったな。グラセフで我慢してくれ。
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