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GoogleMAPでは見つからない⁉︎幻の廃旅館「鳩和荘」を探せ オトナのための廃村散策のススメ

アラサー世代に適した旅行先とは、どこだろうか。

テーマパークは少し若々しすぎるかもしれない。たまには温泉も良いが、かすかに残る少年心もくすぐってほしい。欲を言えば、都会で疲れ果てた肉体を癒してくれる緑もほしい。

そんな貴方には、廃村探索をおススメしよう。

【前回記事】ノスタルジックで幻想的な景色を堪能! オトナのための廃村探索のススメ

(前回までのあらすじ)

30歳を目前に、廃村の魅力に取り憑かれてしまった我々。

奥多摩の山深くに埋もれる廃村「倉沢集落」を目指して旅を始めることになったのだった。

地図から消された村

廃村・廃墟は地図に載っていない。
なぜなら、地図とはいまこの世に存在する場所にたどり着くためのものだから。

というわけで、我々はインターネットの海に漂流する先人たちの記録だけを頼りに、廃村のありかを調査した。
事前におおよその場所は把握できたので、あとは実際に足を運んで確かめるのみである。

廃旅館を探せ

我々は5月某日早朝、JR河辺駅前に集合した。ここで車を借りて、廃村を目指す。

今回の目的地である倉沢集落の前に、まずは鳩和荘という、いまはなき旅館を訪れてみようという話になった。鳩和荘は2000年ごろに廃業した旅館で、20年近く経ったいまでも比較的に綺麗な状態で残っているという。

幻の集落に向けての前哨戦として、ちょうどいいだろう。

廃旅館はJR鳩ノ巣駅周辺に存在したらしいという情報を得て、カーナビの目的地を鳩ノ巣駅に設定する(当然、「鳩和荘」ではカーナビは反応してくれない)。

車を1時間ほど走らせ、鳩ノ巣駅に到着した。

探索開始!

いよいよ、ここからが冒険の始まりだ。

「鳩和荘は鳩ノ巣駅から川に向かって下った方向にある」という情報は入手していた。
手がかりはこれだけ。とりあえず駅から坂を下りて渓谷へと向かう。

何も考えず坂を下ってみる我々(服が被っていて最悪の気分)(撮影/編集部)

何も考えず坂を下ってみる我々(服が被っていて最悪の気分)(撮影/編集部)

ところが残念、この道は行き止まりだった。
引き返して周囲を探索するが、なかなかお目当ての廃墟は現れない。渓谷の向う岸に渡ってみたが、見つからない。

何度か橋を往復してクタクタになりながらも、考えうるルートを虱潰しに当たっていくと、突然お目当ての廃墟が現れた。

はっきり言ってネットに落ちている記録はあまり当てにならない。

そして、我々も紆余曲折を経て辿り着いたので、最短ルートをここに記すことができない。まあ、自力で場所を探すのも廃墟の醍醐味ということで、読者諸氏もじっくり探索してみてはどうだろうか。

途中、鳩和荘の名が書かれた地図看板が落ちていたりするが、これに騙されてはいけない。地図に書かれている「現在地」が、いまこの看板がある場所と同一という保証はどこにもないのだから。

方向音痴の我々を惑わせた「現在地」が記された看板。これが無ければもう少しスムーズに発見できたかもしれない

方向音痴の我々を惑わせた「現在地」が記された看板。これが無ければもう少しスムーズに発見できたかもしれない

我々の眼前に現れたものは…

話を戻そう。ともかく、疲労困憊の我々の前に、その廃墟は姿を現した。

「立ち入り禁止」の張り紙が至る所に貼られており、到底なかに入る勇気は湧いてこない。そんな我々の臆病心を見透かし嘲笑うかのような、正面入り口の「娑婆僧」という落書きが目を引く。

鳩和荘正面入り口。落ち葉が集められており、今でも手入れがされていることが窺える

鳩和荘正面入り口。落ち葉が集められており、今でも手入れがされていることが窺える

無法者からの「お前らは中に入る勇気ないだろ?」という挑戦状(「娑婆僧」は根性無しという意味らしい)

無法者からの「お前らは中に入る勇気ないだろ?」という挑戦状(「娑婆僧」は根性無しという意味らしい)

正面玄関の右手に道が伸びており、そちらを進む。ここから先は一本道なので、迷うことは無いだろう。

右手から見た鳩和荘。窓は固く閉ざされており、中を覗くことはできなかった

右手から見た鳩和荘。窓は固く閉ざされており、中を覗くことはできなかった

さらに先を進むと、やがて小ぶりな橋に差し掛かる。
橋の左手は渓谷となっており、ここから見える景色がこの廃墟の白眉と言っていいだろう。

渓流の上にせり出した部屋。客室の一つなのだろうか? 泊まってみたかった

渓流の上にせり出した部屋。客室の一つなのだろうか? 泊まってみたかった

渓谷の中に、いまにも崖に飲み込まれそうな小さな建物が見える。屋上はテラスだったのだろうか、手すりらしきものは見えるが、すでに緑が生い茂っており全体像を窺い知ることはできない。

何に使われていたのだろうか? 
そもそもどうやってここに建てたのだろうか?

重機を入れるスペースは見当たらない。
疑問と想像が膨らむ。

このまま一本道を進んで、階段を登り続けると青梅街道に戻ることができる。階段は長いので、休み休みで進むと良い。
少し休んで辺りを見回すと、大自然とそれに飲み込まれつつある建物たちを眼下に望むことができる。

青梅街道へと続く階段。ゲームの世界のようだ

青梅街道へと続く階段。ゲームの世界のようだ

どこまでが自然で、どこからが建物なのか最早判別がつかない

どこまでが自然で、どこからが建物なのか最早判別がつかない

鳩和荘探索はここまで。
想像以上の絶景。自然とコンクリートの見事な融合を堪能することができた。

否応無しに廃村への期待も高まる。次なる目的地へと向かうべく、我々は足早に車に乗り込み、鳩ノ巣駅を後にした。(四)

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1996年生まれ。編集者。慶應義塾大学卒業。出版社数社を転々とし、現在は専門出版社に在籍。主に学術書の編集を担当している。横浜生まれ横浜育ちの自称シティボーイ。

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