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幻想的すぎる絶景! 緑に飲み込まれた幻の「倉沢集落」を探せ オトナのための廃村散策のススメ

アラサー世代に適した旅行先とは、どこだろうか。

テーマパークは少し若々しすぎるかもしれない。たまには温泉も良いが、かすかに残る少年心もくすぐってほしい。欲を言えば、都会で疲れ果てた肉体を癒してくれる緑もほしい。

そんな貴方には、廃村探索をおススメしよう。

【前回記事】旅・散歩 GoogleMAPでは見つからない⁉︎幻の廃旅館「鳩和荘」を探せ オトナのための廃村散策のススメ

(前回までのあらすじ)

30歳を目前に、廃村の魅力に取り憑かれてしまった我々。

名高い廃ホテル「鳩和荘」をあとにした我々は、ついに本命の「倉沢集落」へ向かうのだった。

大樹を探せ

ネットで拾ったあやふやな情報を頼りに、都道411号線を西にひた走る。30分ほど行くと、右手に「日原森林館」と書かれた看板が見えてきた。

傍らには、「⇦倉沢のヒノキ」と記された看板も設置されている。

この「倉沢のヒノキ」が、廃村を目指すうえでの、当面の目印となる。
Googleマップにも表示されるので、便利なものである。

目印となる看板。これが見えたら車を降りる(撮影/編集部)

目印となる看板。これが見えたら車を降りる(撮影/編集部)

看板近くに杖が置いてあるので、借りると吉

看板近くに杖が置いてあるので、借りると吉

我々は、少し引き返したところに車を停めさせてもらうと、都道脇から山へと続く細い階段を上りはじめた。

険しい山道

しばらくは獣道のような一本道が続くので、道に迷う心配はない。
途中でベンチも設けられているので、休憩することも可能だ。

ただ、舗装されていない道には大きな石が転がっており、大変歩きにくい。
早くも体力を消耗しつつあった私は、コンビニで買ったおこわを頬張ると、さっと緑茶で流し込んで体力を回復した。

幅の狭い階段が廃村の入り口

幅の狭い階段が廃村の入り口

第一の絶景

30分ほど休まずに歩くと、突如「倉沢のヒノキ」が出現する。

都内最大のヒノキということもあり、天高く枝を広げた姿は壮観である。
我々は一度立ち止まると、小銭を積んで探検の成功を祈願した。

――無事に廃村に辿り着きますように。

なお、ヒノキを囲う石垣の上にも道が続いているが、この時我々が選んだのは、石垣の下から奥へと続くルートである。

石垣の上の道がどこに通じているのかは、まったく解らない。

倉沢のヒノキ。地元では「千年の大ヒノキ」とも呼ばれる

倉沢のヒノキ。地元では「千年の大ヒノキ」とも呼ばれる

最大の難所

倉沢集落を目指すうえでの一番の難所は、この倉沢のヒノキを過ぎたところにある。

急な山の斜面に、ギリギリ大人一人が通れるくらいの細い道が続いている。
手すりも崩れ落ちており、足を踏み外せば大けがをしかねない。靴選びには十分注意して欲しい。

集落の入り口となる道。不安になるが、そのまま進んで良い

集落の入り口となる道。不安になるが、そのまま進んで良い

難所に時間を取られつつ、倉沢のヒノキから10分ほど歩くと、突如テラス状に開けた空間が現れ、歩いて来た者をはっとさせる。

私は、思わずその場に立ち尽くした。
目を凝らすと、少し先に鍋が転がっているのを見つけた。近くには野営跡のようなものもある。

慌てて走り寄ってみると、鍋はかなり古いものだった。
昨日今日廃棄されたものではないだろう。

「ここが廃村なのかな?」

そう思ったが、だとすれば期待外れだ。
家々の跡などは確認できない。古びた日用品が、いくらか散らばっているだけだ。

少々不安な気持ちになって、後ろにいる部員を振り返ろうとした。

ふと、山の斜面が目に入って、私は思わず言葉を失った。

まるで古代遺跡のような石組みの住居跡が、はるか斜面の上まで続いていたのだ。

息を飲む光景。集落は斜面にへばりつくように形成されていた。まだまだ奥がある

息を飲む光景。集落は斜面にへばりつくように形成されていた。まだまだ奥がある

 

――間違いない。
ここが、倉沢集落である。

はっきりと間取りが分かる住居跡

はっきりと間取りが分かる住居跡

貯水槽か。水を引くのも一苦労だったに違いない

貯水槽か。水を引くのも一苦労だったに違いない

さわさわと揺れる木々の葉音に、胸が大きく高鳴るのを感じた。
この廃村には、いったいなにが遺されているのだろう。

(円)

古代遺跡のような民家の跡。

古代遺跡のような民家の跡。

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1994年生まれ。男性。ライター/歴史研究者。一橋大学大学院修了。「文春オンライン」、「プレジデントオンライン」、「週刊読書人」などに寄稿。共著に『紫式部と源氏物語の謎』(プレジデント社)。専門は日本近世村落史だが、哲学、文学、サブカルチャーなども得意。澁澤龍彦に憧れている。

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